『表象文化論研究』は、2003年から2013年にかけて発行された学生論文集です。各号、設定されたテーマについて研究会を行い、その成果をもとに論文集を作成するというユニークな編集方針がとられました。表象文化論コースの大学院生を中心としつつ、時に異なる専攻の学生も参加した誌面からは、当時の活発な議論の様子をうかがうことができます。
2022年、表象文化論コースの学生が運営する新たなwebジャーナル『Phantastopia』の創刊に際し、過去の活動を記録・継承するべく、既刊(1-9号)の電子化を行いました。著作権者の許諾を得られた論文については、東京大学学術機関リポジトリ(UTokyo Repository)にて公開しており、下記のリンクからご覧いただけます。
『表象文化論研究』第1号
2003年3月発行
p.4-17
ホフマニアーナ、あるいはホフマンにたいするフロイトの嫉妬について
p.18-43
個を複製すること:19世紀ヨーロッパにおけるアイデンティティを宿す身体の誕生
p.44-60
饒舌と嘆息と:保田與重郎論
p.62-82
らせん・<女>・落下:ヒッチコック映画作品『めまい』考
p.84-97
1900年的臨床身体・試論
p.98-127
名の流通:<フェヒナー>をめぐって
『表象文化論研究』第2号
2003年3月発行
p.2-26
集団ヒステリーの身体表象:文革期中国のプロパガンダ演劇とその映画化
p.28-42
「国民的精神」の招喚:溝口健二の「国民映画」再考
p.44-59
表現の奪還:植民地政権・軍事政権下のミャンマー映画
p.60-94
歌で演じた革命期:モンゴル演劇成立の歴史
p.96-111
歌への希求:後白河院の今様信仰をめぐって
p.112-126
中世日本の渡来神信仰をめぐって
p.128-143
能楽堂の誕生
『表象文化論研究』第3号
2004年2月発行
p.2-17
物質的崇高について:ポール・ド・マンのカント読解における視覚の問題
p.18-38
盲者の感性論と唯物論的一元論:ディドロ『盲人書簡』読解
p.40-57
輝く闇:ニュッサのグレゴリオス『モーセの生涯』における神体験を巡って
p.58-75
ジョイスを読むマクルーハン
p.76-93
グリーンバーグの疑惑
p.94-114
ゴダール的連結と「正しさ」の問題
『表象文化論研究』第4号
2005年2月発行
p.2-16
古代ギリシア社会における器楽と器楽演奏家:社会的考察の試み
p.18-38
『魔笛』の変遷と継承:18世紀から19世紀初頭にかけてのミュンヘンにおける舞台絵画について
p.40-69
ヒンデミットと青年音楽運動
p.70-91
意味から機能への転換:S.ライヒ<ザ・ケイヴ>における音楽・テクスト・音声・映像
『表象文化論研究』第5号
2006年3月発行
p.2-19
まなざしの共犯性:映画のモビリティーと観客
p.20-39
『ラ・シオタ駅への列車の到着』と動けない観客
p.40-57
オートモビリティと介入:アッバス・キアロスタミ『10話』
p.58-77
途切れなき歩行線:ロベルト・ロッセリーニ『ルイ14世の権力奪取』における力の発生/派生
p.78-97
動揺と均衡のはざまで:成瀬巳喜男監督『秋立ちぬ』における一場面をめぐる考察
p.98-123
「風俗映画」と「現在」のモビリティー:川島雄三と風景の変わり目
p.124-141
サスペンスと越境:『その夜の妻』における都市空間の変容と文化の移動
『表象文化論研究』第6号
2008年3月発行
p.2-16
様式と国民の興亡:伊東忠太による「日本建築史」
p.18-34
有と無のはざま:世阿弥の思想形成の一側面
p.36-60
近代日本の「美術」と「文化」をめぐる諸制度:矢代幸雄による美術史記述と文化国家論
p.62-81
崇高なる共同体:大杉栄の「生の哲学」とフランス生命主義
p.82-104
横溢する命法:九鬼周造にみる現実性の哲学
『表象文化論研究』第7号
2008年12月発行
p.2-17
写真の中の余白の中身:東京ビエンナーレの再考可能性
p.18-40
関口正夫の写真について:『日々』から『こと』へ
p.42-59
重ねるイメージ:ハンス・ベルメールの芸術実践とステレオポルノ写真との関係
p.60-81
写真的驚異:マックス・エルンスト『中国のナイチンゲール』について
p.82-101
フレームを超えて:エイゼンシテイン芸術理論における「イメージ」について
p.102-122
野遊び、隠れ家、探検:ジャン・ルノワールの『ピクニック』とそのラッシュ映像をめぐって
『表象文化論研究』第8号
2009年3月発行
p.2-21
ルドルフ二世の神話イメージにおける政治性について
p.22-37
パトスに媒介されるイメージ:偽ロンギノス『崇高論』における「パンタシアー」の概念について
p.38-53
表象の危機としての群衆経験:ボードレール「現代生活の画家」をめぐって
p.54-75
幾何学的抽象を受け継ぐのは誰か?:アメリカのポストモダン美術批評とソヴィエトの「運動」グループによる構成主義の受容をめぐって
p.76-98
演劇と建築の零度:構成主義運動における労働者クラブ建築
p.100-133
後漢墓の祠堂における孝の表象:扶桑樹と雲・風のモティーフをめぐって
p.134-160
理想郷としての異境:山口県伝来《四季耕作図屏風》の風景をめぐって
『表象文化論研究』第9号
2013年3月発行
p.2-21
お膳の上で : 大野一雄における胎児と母の表象に関する一考察
p.22-48
民俗/実験、アートの交差 : 音の経験に関する一考察
p.50-75
自然、コナトゥス、戦術 : 戦術的ピリオダイゼーションにおける試合とトレーニングの不可分性
p.76-97
「ごっこ遊び」とフィクションの臨界 : ミラン・クンデラ『偽りのヒッチハイク』を読む
p.98-113
積極的に病に罹患すること : フォーサイス・システムによる自己批判、あらたな語り