東京大学大学院表象文化論コースWebジャーナル
東京大学大学院表象文化論コース
Webジャーナル

編集後記

このたび『Phantastopia(パンタストピア)』第1号を公開する運びとなりました。『Phantastopia』は、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻表象文化論コースに所属する修士課程・博士課程の大学院生が主体となって運営・刊行するWebジャーナルです。

本ジャーナルは、第一に、表象文化論コース所属の大学院生の研究成果を広く対外的に発表することを目的としています。第1号は一般的な学術誌と同じく、論文と研究ノートを中心に構成されており、論文は本コースの教員による厳正な査読プロセスを経ています。ブックレビューでは、表象文化論の学問分野に関連する未邦訳の外国語文献を、院生の専門的な知見にもとづき紹介しています。このほか、2021年夏に東京大学駒場博物館にて開催された「宇佐美圭司 よみがえる画家」展のレポート、さらにジャーナルの創刊を記念して、2021年度の表象文化論コース主任である田中純先生よりいただいた祝辞を掲載しました。

『Phantastopia』の第二の目的は、多様な分野を専門とする本コース所属の大学院生が互いに交流しながら、知のダイナミズムを創出する「場」を築くことです。2019年末に始まった新型コロナウイルス感染症の拡大以来、キャンパスでの授業やゼミ、研究会の開催が大きく制限されている状況下で、学生同士で集まり対話し、議論する機会を確保することは、大学院生にとって切実な課題です。本ジャーナルを従来の紙媒体に代わりWebサイトとして公開したことは、コミュニケーションのツールとしてますます重要な位置を占めつつあるオンライン上に、豊かな研究の場を構築することを目指す、わたしたちの挑戦でもあります。2022年春に始まる「研究のトポス」は、リレー形式でエクリチュールを継いでいく試みを通じて、学生が自身の研究手法や思考のあり方を届け合うことを目的としています。

また、『Phantastopia』のWebサイトは、1989年に発足した表象文化論コースの過去の学術成果を継承し、発信する役割も担っています。Webサイト公開にあたり、2003年から2013年にかけて発行されていた学生論文集『表象文化論研究』について、バックナンバーのうち執筆者の許諾を得られた論文のデジタルデータ化および東京大学学術機関リポジトリへの登録を行いました。30年以上にわたって蓄積されてきた表象文化論コースの歴史を引き継ぎながら、新しい成果を、同時代の、そして未来の読者へと広く届ける拠点として、本サイトを発展させていくことを目指します。

本ジャーナル刊行の企画は、パンデミックによる混乱の最中にあった2020年の秋、駒場キャンパス8号館の教務補佐室において、本コース出身の原瑠璃彦さんのご提案をきっかけにスタートしました。2020年10月、岡、乙幡、小手川、谷口、福井の5名によって準備委員会が立ち上がり、翌年4月には一之瀬、梅谷、陰山、銭、野上がメンバーに加わり、計10名の院生からなる編集委員会を発足しました。感染状況に鑑みて全面的にオンラインでの進行を余儀なくされましたが、ジャーナルのタイトルやコンセプト、誌面の構成やレイアウトについて協議を重ね、約1年半の期間を経て無事に公開に至ることができました。

刊行にあたっては、多くの方々からのお力添えをいただきました。とりわけWebサイトの制作をご担当いただいているBOSCO小林雅人さんは、柔らかなグラデーションを基調とした動きのあるデザインによって、『Phantastopia』に生き生きとした「場」を与えてくださいました。各記事の書式や註の表示、図版のレイアウトなど、さまざまな面で実用性と装飾美を共存させる可能性を追求していただいていることは、本ジャーナルにとって大きな幸福です。

表象文化論研究室の先生方、スタッフのみなさまには、投稿論文の査読をはじめとして、『Phantastopia』の運用に全面的なご協力をいただいています。2021年度コース主任の田中先生、第1号編集委員会の教員代表をご担当くださった森元庸介先生と清水晶子先生には、企画の立案からサイトの公開まで、進行をサポートしていただきました。また、学生論文集の運営に関しては、東京大学フランス語・イタリア語部会の発行する学生論文集『Résonances』編集委員会、比較文学比較文化研究室の『比較文学・文化論集』編集委員会のみなさまより、貴重なアドバイスを頂戴しました。本ジャーナルの立ち上げを応援してくださったすべての方に、この場を借りて心より感謝を申し上げます。

院生がみずからの研究成果を共有し、外に向けて発信することのできる広場のような開かれた空間として、『Phantastopia』が、これからも続く表象文化論という名の知的な探索行において新たな歴史を紡いでいくことを、第1号編集委員一同、強く願っています。

 

『Phantastopia』第1号編集委員会
一之瀬ちひろ、梅谷彩香、岡俊一郎、乙幡亮、陰山涼、小手川将、銭清弘、谷口奈々恵、野上貴裕、福井有人

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Phantastopia 1
掲載号
『Phantastopia』第1号
2022.03.08発行